在宅薬剤師のもり日記_13

在宅薬剤師のもり日記_13

「もう死んでもいいと思っている」。診療情報提供書に書かれていた本人の思いからは、悲嘆に暮れた終末期のがん患者の姿を想像していましたが、実際にお会いした彼女は、聡明で穏やかな表情を浮かべた方でした。

 「実家を出て就職した後、発覚した病気と精いっぱい闘ってきたが、打つ手がなくなり実家に戻ってきた。もう死んでもいいと思っている」と淡々と話す彼女からは、「患者」ではなく、自分の人生を自分で選択して生きる、ひとりの人間としての姿を強く感じました。深い敬意、医療者として突き放されたような気持ち、そう感じることの身勝手さの自覚の中、ご家族に「凛とした方ですね」とお声がけするのがやっとだったと記憶しています。