ー社員によるリレーエッセイー Vol.10 平田 悟史

Vol.10 利他の精神

薬局本部副本部長

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 利他の精神。私は、常にこの考え方を意識しています。このフレーズ自体を若いころから知っていたわけではありませんが、振り返ってみると、学生時代から自然にそういう考え方をしていたように思います。それは、自分の行動によって、人が喜び、感謝してくれる姿が、単純にうれしかったのが理由でした。ですから、このフレーズに出会ったときには、『まさにこれだ!』と思ったことを鮮明に覚えています。

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 利他の精神とは、人の幸せが自分の幸せになるという心のことです。逆に自分だけが良ければいいという考え方は、利己の精神と言います。利己の精神で物事をとらえた場合、自分中心で視野が狭くなるのに対して、利他の精神で物事をとらえた場合には、俯瞰して物事を見ることができるため、判断を見誤る可能性が低くなります。この利他の精神という考え方は、さまざまな場面で重要だとあらためて思います。
 
 たとえば、仕事で自分自身が困っているとき、さりげなく手が差し伸べられて助けられ、正しい方向に向かったことはありませんか?あるいは、すばらしい仲間といっしょにそれぞれが尊重し合って仕事をして、自分自身が思う以上に成果をあげた経験はありませんか?上司、部下、自分自身にかかわる方々すべてが、各々『人に良かれ』と思って仕事をすることで、最大の成果が生まれると思います。在宅医療の場合、医師をはじめ、看護師、ケアマネジャー、介護士、そして薬剤師など患者さんを取り巻くさまざまな職種が、各職種を思いやり、各職能を知ったうえで、それぞれが最大のパフォーマンスを発揮すれば患者さんにとってより良い医療が提供できます。しかし、それぞれが利己の精神で仕事をした場合、一方通行の仕事をすることとなり、医療サービスの質の低下につながる事態は容易に想像できます。

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 プライベートでも同様です。家族や友人など自分自身にかかわる方々に対し、それぞれを思いやり、相手にとって良いことを念頭に置いて行動すれば、より良い結果に結びつくのではないでしょうか。そういった行動を取れば、自分自身が困っているときにまわりは助けてくれます。
 
 ただ、どの場合においても、自分自身が犠牲になりすぎて、つぶれてはいけません。他者だけではなく、自分も相手も生きること、つまり、すべての者がいっしょに生きていけるようにすることが根底には必要だと思います。

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 あらためて我々の業界の原点に戻ってみます。薬剤師法第一条で、薬剤師は、『調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする』とあります。つまり、薬剤師として仕事をするには、この利他の精神が必要不可欠であると思いませんか。今回、利他の精神の考え方に触れたことで、今一度原点に帰り、初心と基本を確認する機会にしてみてください。プライベートにおいても、より幸せな暮らしにつながっていくと思います。
 
 私もあらためて、人として、医療人として、自分を見つめ直し、人生を歩んでいきたいと思います。