ー社員によるリレーエッセイー Vol.5 神品勇喜

Vol.5 私の大切にしていること

薬局長
神品 勇喜

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私が薬局での仕事に従事するとき に、大切にしていることが3つあり ます。

①喜ばれることをする

 
 薬局は薬学的知識を駆使して、医療の質と安全性を高めることが使命なのは言うまでもありません。しかし、薬学的知識だけではうまく患者さんに伝わりません。そのため、思いやりを持ち、適度にユーモアを含みながら対応することも重要だと考えています。
 相手を怒らせるのは簡単です。ところが相手を笑わせたり、心を開いてもらうのはとっても難しい……。しかし、それができると、よりお話をうかがえたり、普段の様子が垣間見えたり、結果的に医療の質向上につながると私は思います。
 調剤報酬は、さまざまな要件が設定されているので、それを満たすために質問が一方的になったり、患者さんの気持ちを置き去りにしてしまいがちです。そんなとき、このやり方で「喜ばれているだろうか?」、そして「どうすれば喜んでもらえるだろうか」と考えると、答えが見つけられたり改善につながります。
 がんばって取り組んだことが相手に伝わると素直にうれしいですし、元気が出ます。これを心理学では、「貢献感」と言うそうです。そして「もっと良くするためには、どうすればいいかな?」と自発的に考えられるようになります。
 患者さんだけではなく、多職種連携にも通じる考え方で、私は大切にしています。

②「自分の薬局でお薬をもらってほしい」と思うこと

 どこの薬局でも、もらえるお薬は物質的には同じです。とすれば、患者さんが他の薬局に行ってしまった場合、私の対応が劣っていたことになります。極端かもしれませんが、そのように解釈して、しっかり悔しがるようにしています。そうすると心が燃え上がり、なんとか改善できないものかと、自発的に工夫をするようになります。 
 『私の大切にしていること』は世間とズレが生じたり、ひとりよがりにならないようにときどき見直し、変更もしくは削除しています。ここまでの内容は新入社員のときに考えましたが、何回見直しても残っていますので、私の行動や思考の根っこに当たる部分と言えます。
 次の③は、薬局に数年勤めた後、自分に言い聞かせるかのように『私の大切にしていること』に組み入れました。

③成すべきことを成す

 私が新入社員としてファーマシィに入社したころは、調剤バブルの直後でした。急激に薬局が増えた影響か、これまで薬局の対応で困っている方々が当社の薬局に相談される姿をたくさん見てきました。
 たとえば、
・在庫がない場合、取り寄せずにうまく言って調剤拒否する
・他の医療機関からイレギュラーな依頼があると簡単に断る
・盲目の患者さんの在宅訪問で、服薬カレンダーを玄関に置くだけ。どうやって飲めるのでしょうか?
 できることしかやらずに、報酬はきっちりいただく。ひどいなあ……と思いました。
 〝こんな薬局には絶対にしない!〞と強く思い「成すべきことを成す」を意識するようになりました。

【最後に】

 私の勤務するファーマシィ薬局藤井寺駅前は無菌調剤室を設置しています。無菌調剤室では麻薬の注射剤を調剤でき、末期がん患者さんが、ご自宅で最期の時間をすごせるようになります。ご自宅に帰ることによって、家族とのプライベートな時間をすごせたり、住み慣れた安心感からか、痛みが軽減する場合もあります。しかし、この重要な無菌調剤室が、まだまだ足りていないのが現状です。人員、知識不足、コスト、周知方法などさまざまな問題があるからです。そのような問題に直面したときは『私の大切にしていること』を思い出して対応してきました。
 今後も「患者さんに喜ばれることを当薬局で成せるよう」に取り組んでまいります。